活動紹介

発達障害当事者とご家族の支援、啓蒙活動をする「NPO法人チャイルドギフト」さんを取材しました。

発達障害という言葉が徐々に市民権を獲得するようになり、社会の理解も少しずつ得られる環境が整ってきました。埼玉県川口市を中心に、発達障害当事者への支援を長年続けてこられた、NPO法人チャイルドギフトの吉野代表に、お話をお聞きしました。

 

―活動を始めたきっかけについて教えてください

チャイルドギフトは、埼玉県川口市内を拠点に、発達障害当事者とご家族の支援、啓蒙活動を目的としたNPO法人です。

発達障害の疑いのあった長男の診断を受けたとき、私(吉野代表)自身にも発達障害があることがわかりました。私も、子どもの頃に周囲と会話が通じなかったり、孤立したり、皆ができることができなくて辛い思いをした経験がありました。

長男には自分と同じような辛い思いをさせたくない、生きやすい世の中にしていきたいという思いから、2013年に任意団体として活動を始め、翌年NPO法人になりました。

ご長男(左)と吉野代表(右)

ご長男(左)と吉野代表(右)

 

 

 

 

 

 

―主な活動内容を教えてください

民間学童や放課後児童クラブ等への訪問支援を行っていますが、現在は私一人で多くの支援先をまわっている状況です。私以外の支援員の養成に力を入れるため、2017年度に「発達障害ライフサポートメンター養成講座」を開講。養成講座で認定を受けた人を訪問支援員として派遣することで、今後、活動の幅を広げて行く方針です。

保護者に向けた発達障害への理解を深めるペアレントトレーニング「FAMiIKU」での活動風景

保護者に向けた発達障害への理解を深めるペアレントトレーニング「FAMiIKU」での活動風景

 

―今回の新型コロナの影響は?

予定していた訪問支援や養成講座は、全てキャンセルになりました。チャイルドギフトの活動自体に大きな支障が出ています。

気になるのはやはり発達障害当事者の方々。今、当事者が最も困っているのは金銭面です。正社員として勤務している方は、固定のお給料が今も入ってきますが、パートタイムやアルバイトで勤務している方は時給制です。その方々は、今は無収入状態になっています。

また、この期間の自粛はメンタルにも影響を与えています。先が見えない不安と、収入面での不安。この二つが合わさり、症状が悪化している方も多数おられます。本人が発達障害を持っていると自覚していないケースは、さらに深刻です。環境の激変により「ハイな状態」になっているのに、ご自身が気付いていない。自粛の中、病院へもなかなか行けない。

ADHDを持っている子どもたちの親御さんも気になります。そうした子どもたちは、基本的に、動き回りたいという欲求があり、それを普段の生活の中でうまく発散させて解消しないといけないのですが、家にずっといなければならない。発散できないのでストレスがたまり、癇癪(かんしゃく)を起こす。

子どもたちと長い時間接する母親の場合は、まだ慣れているのでなんとかなっているのですが、普段顔を合わせる時間が短い父親がストレスの溜まった子どもと接すると、父親は驚いてしまう。または、ついつい強めに叱ってしまうことになりがちです。それでまた、お子さんの精神的なバランスが変わるわけです。それに伴い、母親もストレスが積もる。

いわゆる健常者(障害を持たない人たち)で、どんなに元気な人でも、今の時期ふさぎ込んでしまいますよね。発達障害当事者は、さらに状況がひどくなる。こういう現状を危惧しています。

 

―最近始められた新しい取り組みがあるそうですね

子どもたち向けのLINEを使った無料相談を始めました。子どもたちとは、この相談の中で知った内容は、お父さんやお母さんには教えない、という約束をしています。

このアカウントを使い、子どもたちが、私に対し発達障害に関する相談に関係ない、全く関係ない話をしてくる(笑)。それはそれで、ほっこりするわけです。それが子どもたちとのコミュニケーションになり、そうしたたわいのない雑談の中から、たとえば、「今日、お母さんに叩かれた」、などのシリアスな問題につながる兆候を見抜くきっかけにもなるのではと考えています。そのため、LINE無料相談はこのまま継続しても良いかなと。

 

―行政へ伝えたいことはありますか?

今の状況を理解しておいていただきたいです。
障害手帳を取得している方の場合は、行政側でも障害支援課などが、その方の存在を把握していますが、障害手帳を持っていない当事者の方も多数おられます。いわゆるグレーゾーンと言われる方々もここに入ります。就職に影響がある、カミングアウトしたくないから手帳を取得しない、という事情もある。そうした人たちについては、行政側は存在そのものを把握できていないわけです。

発達障害の支援については、行政側にまだノウハウが十分行き渡っていないこともあり、元来、行政による支援は難しいという側面があります。存在自体を把握できていなければ、なおさらですね。そのため、行政には周りの誰からも気づかれずに体調が悪化している方がいる、という事実を知っておいていただけると有り難いですね。

 

―企業が気を付けるべきことはありますか?

発達障害の当事者からすると、新型コロナ前の環境から、一度リモートワークに切り替わったところで、当事者にとっての大きな環境変化となりました。経済が再開した後、再度通勤が必要になると、2回目の環境変化となります。発達障害当事者にとって、こうした変化は非常につらいものとなります。そのため、出勤が再開した後に体調を崩し、そのまま引きこもりに入り退職してしまうケースも出てくる可能性があります。企業側もこうした点を踏まえ、様子がおかしい従業員がいた場合に、それは発達障害から生じた可能性があること、適切なケアが必要になるケースかもしれないということを、心にとめておいていただけるとありがたいです。

 

―発達障害を抱える当事者の方々に一言

こういうご時世だから仕方がない、で終わらせるのではなく、「頼れるものは頼ろう、使えるものは使おう」とお伝えしたいです。「私だけが苦しいのではないから。皆が大変なのだから」と申し訳なく感じる気持ちもよくわかりますが、一人で我慢し過ぎず、周りに頼ってください。あなたは一人じゃないですから。

 

取材後記
NPO総研の取材シリーズ、記念すべき第1回目は、チャイルドギフトの吉野代表です。私自身が同団体の事務局長・広報担当でもあり、初回取材をお願いしました。発達障害当事者を支援する団体は全国的にもまだまだ少なく、行政と医療機関と間に立つ中間的存在でもある同団体は、当事者の方にとっては貴重な存在です。コロナ禍で、吉野代表の活動が制限されてしまったことで、不安を抱える当事者の方々も多数いらっしゃることと思いますが、今後チャイルドギフトでは、オンラインでの対応も増やしていくとのことですので、「頼れるものは頼る」気持ちで、気軽に相談をしてみてはいかがでしょうか。吉野代表の活動は、こうしたコロナ禍でこそ、必要な支援だと思います。
*取材・ライター:佐藤 匡史(NPO総研 所長・編集長)

 

基本情報
法人名:特定非営利活動法人チャイルドギフト
代表:吉野 春江(よしの はるえ)
URL:https://childgift.org/
住所(事務局):埼玉県川口市西青木3-10-12-101
TEL:050-5236-7512
FAX:048-611-7671

 

代表プロフィール
吉野 春江(よしの はるえ)
1970年9月21日、沖縄県生まれ。

2012年に、長男が発達障害であることが判明。同時に医師より、本人も発達障害であることを告げられ、40代にして初めて、自らも発達障害当事者であることを認識。
子どもの頃から「私は周りの子とは違う」と感じながら育つ。「算数障害」の為、中学時代にはテストは赤点ばかり。そうした特性が原因で、母親に叱られる事もしばしば。
他人の気持ちが分からず、クラスメートを傷つけてしまう事もあったが、当時はその意識はなく、数年経ってから自分が相手を傷つけていたという事を知る。
いじめにあった事もある。当時はなぜいじめられているのか分からなかったが、今なら「発達障害の特性が原因だった」とはっきり分かる。
自分と同じような思いを、長男に、そして、発達障害を持つ多くの方々にもして欲しくない。
そうした願いから、特定非営利活動法人チャイルド・ギフトを2013年に設立。
発達障害当事者の周りにいる多くの方々に、発達障害とは何か?という正しい知識を持っていただくとともに、発達障害に対する誤解や偏見を無くし、互いにより幸せな毎日を過ごして欲しい。
発達障害を持つ当事者の方々にも、自らの特性を正しく認識していただき、自分自身を理解する一助にして欲しい。
そうした思いを胸に、埼玉県を中心に発達障害の支援活動を続けている。
主に児童向けに培った発達障害支援の経験とノウハウを、企業人事の世界に横展開するために、多方面へ奔走中。

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